1981年(昭和56年)の資生堂VSカネボウ春の陣は
ちょっとしたトラブルで幕を開けた
この春カネボウは、まだ知名度の低かった大滝詠一に目を付け
ナイアガラ・トライアングル名義で発売予定だった「君は天然色」という曲を
タイアップ曲に指名して交渉に入った
しかしタイアップの条件は既に出来上がっている歌詞に商品名を入れて全面書き換え
ボーカルを録り直すというミュージシャンとしては屈辱の条件だった
大滝さんはこの条件を拒否し交渉は物別れになる
大滝さんと物別れになったカネボウは矢野顕子さんにタイアップを依頼する
しかし話はこれで終らない、何とライバルの資生堂が
この年の冬のキャンペーンで大滝さんとタイアップを果たす
さながら両社の1981年のCM対決は仁義なき戦いの様相だったのだ
<カネボウ>
・春のキャンペーン
キャッチコピー 「春咲小紅ミニミニ」
タイアップ曲 春咲小紅
楽曲提携 矢野顕子 モデル 林元子
・夏のキャンペーン
キャッチコピー 「君に、クラクラ」
タイアップ曲 君に、クラクラ 楽曲提供 SKY
モデル 城戸真亜子
・秋のキャンペーン
キャッチコピー 「キッスは目にして、ほぉ!」
タイアップ曲 キッスは目にして
楽曲提携 ザ・ヴィーナス モデル 佐藤美知子
・冬のキャンペーン
キャッチコピー 「うるおいペアー」
モデル 古手川祐子
春のキャンペーン 「春咲小紅ミニミニ」
タイアップ曲 春咲小紅 アーティスト 矢野顕子
大滝さんと物別れなったカネボウがタイアップしたのは
矢野顕子さんの「春咲小紅」だった
作詞は1978年(昭和53年)に矢沢永吉さんの激論集「成りあがり」を編集し
一躍注目を集めていた新進気鋭のコピーライター・糸井重里氏
作曲は矢野さん本人だが、編曲はYMOが担当した
彼女はYMOのワールドツアーのメンバーであり、すでに坂本龍一さんとの間に娘もいた
そんな訳で汎アジア圏をイメージしたテクノっぽい音作りは、YMOサウンドだ
この曲は結果大ヒットになり商品の販売に大いに貢献した
夏のキャンペーン 「君に、クラクラ」
タイアップ曲 君に、クラクラ アーティスト SKY
う~ん この曲を聴いても、CM動画を見ても何も思い出せないな~
「君に、クラクラ」を歌ってるのはSKYという男性コンビのようだがまったく記憶にない
2人とも 183センチの長身の森本隆さん 北沢英三さん(現・八田雅弘さん) の
実力派シンガーソングライター ユニット だそうだ
念のためにYouTubeで全編聴いてみたが記憶のカケラもありませんでした 笑!
秋のキャンペーン 「キッスは目にして、ほぉ!」
タイアップ曲 キッスは目にして アーティスト ザ・ヴィーナス
ザ・ヴィーナスの「キッスは目にして」は1981年(昭和56年)7月にリリースされたが
この年僕は美容学校に行ってた頃でアメリカンオールディーズやロカビリーに
傾倒してた頃だから、よく知ってるし、当時ヴィーナスのライブにも行った
「キッスは目にして」は、この曲を知らなくても誰もが聞いた事あると
感じるメロディーだと思うが実はこの曲の原曲は
ベートーヴェンの「エリーゼのために」なんですよね
ちなみに、この曲は1959年(昭和34年)には双子の女性デュオ
「ザ・ピーナッツ」が「情熱の花」というタイトルでリリースしている
<資生堂>
・春のキャンペーン
キャッチコピー 「ニートカラー」
タイアップ曲 ニートな午後3時 楽曲提供 松原みき
モデル マイティ・ルドント
・夏のキャンペーン
キャッチコピー 「ひかりとパラソル」
タイアップ曲 サマーピープル 楽曲提供 吉田拓郎
モデル メアリー岩本(マリアン)
・秋のキャンペーン
キャッチコピー 「メイク23秒」
タイアップ曲 メイク23秒
楽曲提携 桃井かおり モデル ナンシー・ナナ
・冬のキャンペーン
キャッチコピー 「A面で恋をして」
タイアップ曲 A面で恋をして 楽曲提携 ナイアガラ・トライアングル
モデル 美雪花代
春のキャンペーン 「ニートカラー」
タイアップ曲 ニートな午後3時 アーティスト 松原みき
資生堂が春の陣に起用したのは実力派シンガーソングライター
松原みきさんの「ニートな午後3時」だった
こちらの曲は以前「My Musick Travel」でもご紹介したが
個人的には、都会的でカッコいい曲で好きな曲だったが
そこそこはヒットしたがライバルカネボウの「春咲小紅」には適わなかった
その時の記事にも書いたがニートと言えば現代では「NEET」という
無職の人を指す言葉だが、ここで言う「NEAT」は当時
一部のプレッピーとかの間で「ステキ」とか「格好いい」という意味で
使われていた「ニート」という言葉が語源になっている
資生堂は1981年春の口紅の新色として明度の低い渋めの色を
「ニートカラー」と名付けて売り出そうとしたという事ですね
夏のキャンペーン 「ひかりとパラソル」
タイアップ曲 サマーピープル アーティスト 吉田拓郎
作詞は岡本おさみ氏、作曲は吉田拓郎さん、編曲は松任谷正隆さんという構成で
リリースされた、吉田拓郎さんの「ひかりとパラソル」
この曲は拓郎さんのアルバムには収録されなかったそうで
後にベストアルバムに収録されたんだそうだ
歌詞にもそれとなくパラソルという単語が入っているが
シングル盤は非売品で販促盤という形でのリリースだったらしい
てか、販促盤ってのは具体的にはどういう存在なのか?
当時のCMソングで関係者のみに配られた?
資生堂商品を扱う店等でのBGM用に制作された?
資生堂商品の購入者特典で顧客に配られた?
うーん、具体的には分かりません 笑!
冬のキャンペーン 「A面で恋をして」
タイアップ曲 A面で恋をして アーティスト ナイアガラ・トライアング
春の段階でカネボウとゴタゴタがありボツになったナイアガラ・トライアングの
「君は天然色」はロート製薬のCMに採用された
同じ頃、今度は資生堂からCMソングの声が大滝さんにかかる
資生堂側の提示したお題は「A面で恋をして」、土屋耕一氏のコピーである
この曲はフィル・スペクターから影響を受けた典型的な
アメリカンポップスのサウンドに仕上げられた
ところが「A面で恋をして」のCMはオンエアされて
わずか10日あまりで放送中止になる
CM出演者の元宝塚女優「美雪花代」と自民党の大物代議士との間に
不倫スキャンダルが発生したためだった
美雪花代さんの不倫をスッパ抜いたのは週刊文春だったそうだ
この一連の騒動は広告業界では「カネボウの呪い」という都市伝説になっているそうだ
巡る因果は糸車、大滝さんがカネボウの仕事を断らなければ
矢野さんの曲がシングルチャートの上位に来ることもなかっただろうし
半年後に大滝さんが資生堂のCM曲を歌うこともなかっただろう
真意の程はわからないが損得勘定で言うと1981年のCM合戦は
個人的にはカネボウに軍配が上がるように思う 笑!
ジャンジャン!!