さて、昨日に引き続き今回の白石作品は2016年(平成28年)に
公開された「日本で一番悪い奴ら」という作品
この映画も前回ご紹介した白石監督の「凶悪」同様に
実際にあった事件を映画化した実録路線作品だ
原作は稲葉圭昭氏による「恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白」
実際にあった稲葉事件をモチーフに現役警察官による覚せい剤取引や拳銃売買
そして背景にある警察の組織的な裏金作りや不祥事
それらに翻弄され没落していく道警刑事を描いた作品だ
実在の事件をもとに描いた「凶悪」で話題をさらった白石和彌監督が
2002年の北海道警察で起こり「日本警察史上最大の不祥事」とされた
「稲葉事件」を題材に描いたのが「日本で一番悪い奴ら」だ
主演の綾野剛が演じる北海道警の刑事・諸星要一が捜査協力者で「S」と呼ばれる
裏社会のスパイとともに悪事に手を染めていく様を描く
大学時代に鍛えた柔道の腕前を買われて道警の刑事となった諸星は
強い正義感を持ち合わせているが、なかなかうだつが上がらない
やがて、敏腕刑事の村井から「裏社会に飛び込みS(スパイ)を作れ」と教えられた諸星は
その言葉の通りにSを率いて危険な捜査に踏み込んでいく
暴力団と密接な関係を持ち、諸星に影響を与える村井役で
「凶悪」に続き白石監督とタッグを組むピエール瀧が出演する
警察とやくざ社会の底知れぬ癒着を暴いた映画としては以前ご紹介した深作欣二監督と
脚本家、笠原和夫氏の黄金コンビによる1975年(昭和50年)公開の「県警対組織暴力」がある
2013年の「凶悪」で一躍、注目を浴びた白石和彌監督は脚本の池上純哉氏と
明らかにこの金字塔的な東映実録やくざ映画の傑作に対抗しようとする野心をみなぎらせていた
それが「日本で一番悪い奴ら」に引き継がれ
来月5月12日に公開される「孤狼の血」にも引き継がれた
白石監督は稲葉氏の半生を読み、「考えられないほどの面白さ」に度肝を抜かれたそうだ
「これは映画になると直感し、なおかつシンパシーを感じ
稲葉さんの気持ちが手に取るようにわかったんです」と言葉に力を込めた
「僕は学生あがりですぐに映画界に入り、そのなかで本当はやってはいけない撮影もしました
しかし映画の歴史は、連綿とそれをやり続けています
助監督の僕らは監督のやりたがっていることを、多少の危険も辞さずに
全部やり場合によっては捕まってもいいという勢いでやっていました
外から見ると異常なことですが僕らはそうして映画を作ってきたわけです
その点がすごく稲葉さんとシンクロしたんです」
と語っておられる
白石監督は師匠の故・若松孝二監督から聞いたエピソードを引き合いにこう明かす
「若松さんが『戒厳令の夜』でプロデューサーをやった時、メガホンをとった
山下耕作監督から『高速道路で検問している画がほしい』と
許可がとれるわけがないから、衣装部に警官の服を借りて当時助監督だった
崔洋一さんらと黙ってやったそうなんです(笑)
それに比べたら僕らがやっていることなんてちっぽけな事ですが
もちろん許可がとれるところは全部とるし私有地で置き換えられるならそうします
でも、どうしてもできない場合がある、だからといって『やっていい』わけではないですが
僕らはそれが必要だと思ってやってきた」
う~ん、そのスピリッツが孤狼の血でも発揮されたんだろうな~
「日本で一番悪い奴ら」 予告編 2016
諸星の26年間を描出するうえで白石監督と主演の綾野剛さんにはある約束があったという
「人生に台本はなく、翌日に何が起こるかわからない
だから、先々の計算はやめる現場の目の前のことを全力でやる」
2人は、“瞬間”を生きた撮影に思いを馳せた
「登場人物全員、目の前で起きていることに全力で対応し
常にベターな選択をしているんです
それがたまたま間違った方向に行ってしまうという物語
そこには、嘘をつかないようにやっていきました」
現在そんなアウトローなバイオレンスを撮らせたら日本一だと言われる白石監督
最新作でもある「孤狼の血」の公開も楽しみですね!
ジャンジャン!!