さて、先日の「聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実」の記事で
2本の戦争映画のDVDを借りたと書きましたが
もう1本は「男たちの大和 / YAMATO」という作品でした
「男たちの大和 / YAMATO」は2005年12月に公開された辺見じゅん著
「決定版 男たちの大和」原作の終戦60周年を記念して東映が制作した映画です
この作品も観るのは3回目くらいでしたね
鹿児島県・枕崎で生きてきた老漁師の神尾(仲代達矢)は内田真貴子(鈴木京香)と名乗る
若い女性に懇願され東シナ海を西へと小さな漁船を走らせていた
内田二兵曹・・・神尾の胸に鮮やかに,そして切々と甦ってくるのは
60年前の光景,戦友たちの姿・・・
昭和19年2月,若き日の神尾(松山ケンイチ)たち特別年少兵が大和に乗り込み
尊敬できる魅力的な上官,森脇二主曹(反町隆史)と内田二兵曹(中村獅童)に出会う
若い乗組員は,レイテ沖海戦などの実戦に重ね成長していくが
戦局は悪化の一途をたどっていく
昭和20年4月1日には,米軍が沖縄に上陸
ついに大和に沖縄への水上特攻の命令が下される
4月6日,それぞれの思いを胸に大和は沖縄へと出撃
乗組員達の最後の奮闘が始まった・・・
前回紹介した「聯合艦隊司令長官 山本五十六」や、2013年に公開された
「永遠の0」もそうですが、これらの戦争映画は基本的には史実を元に制作されますが
劇中で繰り広げられる物語はフィクションであるケースが多い
それこそ、原作や脚本によっての視点があるから賛否あって当然だとも思う
往々にして沖縄への水上特攻などを扱った映画は、司令長官や艦長などの
軍の上層部を題材にした作品が多いが、本作品は主に水兵や下士官に焦点を当て
現代の反戦イメージとは異なる思想や価値観で生活する人々の視点から見た戦争を描いている
作中にはアメリカ軍の視点による描写やアメリカ軍関係者が一切登場しない
戦闘シーンでもアメリカ軍の艦上機が無機質に襲い掛かってくるのみで
戦場に立つ当事者の視点で語られている
その一方で艦内で懲罰として振るわれる暴力や、愛する人を失った女性の悲しみ
労働力である成人男性を徴兵されて疲弊していく農漁村の姿も強く描かれている
当時の日本の精神主義偏重を批判する台詞も多く登場し
反戦や戦争を美化する視点に偏らないようバランスが取られている
余談だが、川添二等兵曹役を演じた、覚せい剤使用で逮捕され、嫁の高島礼子さんに
離婚届けを突き付けられた高知東生さん(笑)は、実際に大和に乗艦していた生存者から
海軍の所作や儀礼、高角砲弾の持ち運び方の指導を受けたそうだ
「当時を思い出されたのか、涙ぐみながら指導して頂いた事は
私の役者経験の中で一番感動した事でした」
と語っている
早く薬物依存症を克服し、社会復帰して頂きたいものだ 笑!
戦艦大和は呉海軍工廠で建造され、呉港から沖縄戦線に出発したとあって
とうぜん呉でもロケが行われている
写真は大和ミュージアムを見学する鈴木京香さん
呉海上自衛隊の潜水艦基地
先日記事にした江田島の旧海軍兵学校、現在の海上自衛隊第1術科学校
CGを駆使してるが、呉空襲が描かれた旧呉海軍工廠敷地と呉湾
呉市長迫町にある海軍墓地の戦艦大和慰霊碑に手を合わす鈴木京香さん
撮影には呉海上自衛隊の護衛艦「ひえい」や、掃海母艦「ぶんご」も使われ
更には大和ミュージアムに展示されている10分の1の大和の模型も合成して撮影された
しかし何と言っても戦艦大和のオープンセットが広島県尾道市向島町の
日立造船向島西工場跡地に総工費約6億円をかけ再現されたのが凄い
大和の全長263メートルのうち艦首から艦橋付近までの190メートルが
原寸大で再現されたのである
「男たちの大和 / YAMATO」は2005年の邦画興行収入1位になっているが
何と映画の制作費は約25億円という事だ
ロケ現場で記者発表が行われた際、亀田良一尾道市長と佐藤忠男尾道商工会議所会頭から
岡田茂東映相談役に「ロケセットを観光に使わせて頂きたい」と申し出があり快諾
同年7月17日からロケセットが一般公開された
ちなみに入場料大人500円、子供300円だった
当初はセットの寿命を考えて2006年3月31日に公開を終了する予定だったが
予想を大幅に上回る入場者数のため、細かな修復をしながら
同年5月7日のゴールデンウィーク期間まで公開期間を延長
最終日に100万人突破の快挙を達成し、休業日を除く253日間に
100万2343人もの入場者が訪れた
3億円以上の入場収入その他、経済効果は25億円程度とされた
オープンセットは公開終了後の5月10日より解体が開始された
さらに公開の延長を望む声も多く、事実、公開最終日には
セットを見学するまで3時間もの待ち時間が発生した
しかしながらオープンセットの設置現場は休止中の造船所であり
この造船所の再稼動が迫っていたため閉鎖に至った
解体後、東映は主砲身や機銃、小道具など、セットの一部分計64点を
呉市にある大和ミュージアムに寄贈した
大和ミュージアムの別館にて副砲塔などが展示されていたが、その後大部分が撤去された
尾道が撮影地に選定されたのは、日立造船があったこと、交通の便の良さに加え
尾道市民の映画に対する理解の深さなどの理由からで、製作的な優位性は他都市を圧倒した
結果的には尾道に大変な経済効果をもたらし全国のフィルムコミッションの憧憬の的になった
ここで僕が思うのは、詳しい経緯はわからないが、なぜオープンセットが
大和が建造された呉ではなく尾道に建造されたのかという事だ
呉には適当な場所がなかったという事か?
それなら話はわからんでもないが「尾道市民の映画に対する理解の深さなどの理由からで
製作的な優位性は他都市を圧倒した」と、いう事に呉行政に疑念を感じる
結果、尾道のオープンセットは3億円以上の入場収入その他
経済効果は25億円程度とされたとあるから尚更だ
ここだけの話(笑)、先日呉で行われた映画「孤狼の血」のロケ協力に関しても
当初呉行政はダメ出ししたと、ある筋から聞いた
ヤクザという裏社会を描く作品だからかどうかは知らないが、僕の印象では
どうも呉行政は「前例がない」との理由で何かに対し非協力的、保守的だと感じる
そのくせに御殿のような市役所はポンと建ててしまうのだ
尾道は呉とよく似た歴史情緒あふれる魅力的な港町だ
しかし僕の主観では呉は尾道に完全に水を開けられている
行政のせいばかりにも出来ないとも思うが、やはり行政の差だと思う
男たちの大和 / YAMATO PV 2005 東映
呉海軍工廠で建造された世界最大であり
日本海軍史上最強で最後の戦艦と言われる戦艦大和
その大和の歴史が悲運だった事はよく知られた事実だ
昨年話題になったアニメ映画「この世界の片隅に」にも大和は登場するが
「この世界の片隅に」で描かれた世界観も、「男たちの大和 / YAMATO」で描かれた世界観も
同じ時代にどちらも共存した日本の歴史であり、呉の歴史でもあるのだ
まだ「男たちの大和 / YAMATO」観てない人、是非観て下さいね!
尚、戦艦大和については以前詳しく記事に取り上げています
ご興味がある方は是非ご覧になって観て下さいね ジャンジャン!!
呉の歴史と大和ミュージアム 戦艦大和